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文芸のおすすめ

2019年10月11日

文芸

アンジュと頭獅王

吉田修一

小学館

¥ 1,200(税抜)

著者がこよなく愛するホテル「パークハイアット東京」の25周年を記念して書き下ろされた本作は、当ホテルのコンセプトのひとつとなる「タイムレス」という言葉の意味を意識し、“時間を超えて”現在まで語り継がれてきた文学である「古典」が題材となっています。

原典『山椒太夫』の、慈悲の心を描く勧善懲悪譚を踏襲しつつ、著者の大胆な解釈で加筆された、平安末期から令和まで約800年の時を飛び越える疾風怒濤の展開は、まさに圧巻。古典文学が好きな人もなんとなく敬遠していた人も楽しめる「古典エンターテイメント」に仕上がっています。

さらに、本書において特筆すべきは、日本語のリズムを楽しむために凝らされた工夫の数々。流ちょうに読めるようたっぷりと振られたルビ、十分にとられた行間・余白。そして、重要な文言は1ページをまるまる使い大きな文字で提示することでもたらされる、言葉が真に迫る演劇的効果。

説経節の七五調のリズムに魅せられて、するすると物語の中に引き込まれてゆく心地よさを味わい尽くせる一冊です。