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ほんとうの道徳

苫野一徳

トランスビュー

¥ 1728(税込)

2018年度に小学校で、2019年度には中学校でも、道徳が正式な「教科」となりました。これまでも、「道徳の時間」とよばれる授業があったので、多くの方はおおよそのイメージができると思うのですが…ここで「教えられた」ことには、全てではなくとも、どこか胡散臭さを感じたり、綺麗ごとだという印象を拭いきれない部分があったのではないでしょうか?一方先生たちは、人としての理想的な在り方を教えながら、自分もまたひとりの人としてどう感じてきたのでしょうか?今や先生たちは、子どもたちに、道徳教育において「評価」を下さねばならぬ位置に立たされてもいるわけです。

本書の著者で、熊大教育学部准教授の苫野一徳先生は、結論からいえば、そもそも道徳教育は、学校がするべきじゃない、と考えておられます。道徳が、万人に共通の絶対的に正しい価値観ではない、ということが理由のひとつ。生まれも育ちも違えば、国籍や宗教など様々な面で異なる多様な人びと、つまり多様な「モラル」の持ち主たちからなる現代の社会が、限定的な価値観でまとめられるほど単純なものではなくなっているからです。そういった「モラル」の違いを超えて、共存を目指す「ルール」を子供たち自身が作り合っていく経験や教育が、もっと本気で保障され実践されていくべきだと。

本書ではまず、先にも述べた、絶対的に正しい価値観ではない「道徳」というものが、では一体何なのかということを、哲学的に明らかにしていきます。それが何なのか、一度徹底的に考えずして議論も何もありません。

次に、すでに正式な教科として一歩を踏み出した道徳教育という枠組みの中でも、実りある学びの時間を実現していくための、学校に限らず家庭でもすぐに取り組めるような、3つの実践案が具体的に提示されます。

そして最後に、道徳教育に代わる教育、学校で実践されるべき教育として、授業の方法論にとどまらず学校そのものを変革していくためのアイディアが提示されます。本書の中で、折に触れて言及される「市民教育」を実践する学校です。その市民教育の根本にあるのが「相互承認」。これは苫野先生が最も大切に考えておられ、先述した、ルールを自分たちで作り合っていくことと深い関りがある本書全体のキーワードです。子どもたちの相互承認の感度を育んでいく場としての学校、それは可能なのか?興味のある方はもちろん、それこそ絵空事じゃないのか?と思う方にも読んでみて頂きたい一冊です。