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文芸

メタリック(歌集)

小佐野彈

短歌研究社

¥ 2160(税込)

 ママレモン香る朝焼け性別は柑橘類としておく いまは
 セックスに似てゐるけれどセックスぢやないさ僕らのこんな行為は 
 どれほどの量の酸素に包まれて眠るふたりか 無垢な日本で
 俺たちは帰巣本能うしなつた鴉なんだよ だから好きだよ
 十字架のピアスぷつりと挿したれば側頭部から夜は始まる

社会への怒りと苦悩、希望と諦念、歓び、割り切れない思い――。
ありのままの裸の姿をつむぐ、心に突き刺さる370のまったく新しい歌。
解説=水原紫苑/野口あや子  装幀=鈴木成一デザイン室

日本語による「哲学エッセイ」を確立し、さいごまでペンを手放すことなく、駆け抜けるようにこの世を去った文筆家・池田晶子さんの意思と業績を記念して創設された「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を 、この度、本書の著者である小佐野彈(おさの・だん)さんが受賞されました!この賞は、ジャンルを問わず、ひたすら考えること、それを言葉で表わし、結果として新たな表現形式を獲得しようとする人間の営みに至上の価値を置き、考える日本語の美しさ、その表現者としての姿勢と可能性を顕彰し、応援してゆこうとするものです。ぜひ読んでみてください!

【授賞理由】
むらさきの性もてあます僕だから次は蝸牛として生まれたい
擁きあふときあなたから匂ひ立つ雌雄それぞれわたしのものだ
(第一歌集『メタリック』より)

赤であり青でもあると同時に、赤でもなく青でもない「むらさきの性」。この自己規定には与えられた属性への抵抗と、それを超える自由への切実な希求がある。小佐野氏の短歌には、男と女という二項対立を等身大のリアリティで超えるやわらかなセクシュアリティと、人を恋うる気持ちの普遍性があり、それを衒いなく描く健康な感性と、古典的でありながら新鮮な言語感覚に大きな魅力がある。短歌以外のジャンルにも積極的に挑戦しながら、既成の価値観を超えて「未だ言葉にされ得ないもの」に迫ろうとする小佐野氏の表現に期待し、当賞を贈ります。